大学受験の勉強や高校の授業で困ったときは - 塾講師が教える受験勉強のコツや勉強法

6章 高校三年生の指導

 

高3生の指導

 

高3生を指導する上では注意しなければならないことがたくさんある。講師の知識も求められる。

 

中途半端な受験情報を与えてはならない。知ってるつもりで満足せず、きちんとした指導力をつけてほしい。

 

 

6-1 入試スケジュール

 

6-1-1 受験は冬ではない

 

高3生はおろか、講師すらも把握できていないことが多いのが、入試スケジュールだ。受験は冬だと思っているようなら、全面的に反省してほしい。

 

大学入試は国公立専願でない限り、秋から始まる。私立大学の公募推薦入試があるからだ。多くの生徒は10月〜11月の間に入試を控えることになる。

 

つまり、中3の入試に比べて勉強スケジュールも3,4ヶ月分早くなる。

 

9月に単元解説をしているようでは既に遅い。入試1ヶ月前には赤本を解いている段階でないといけないから、逆算すれば夏には入試レベルの演習をしているはずだとわかるはずだ。

 

どうしても感覚がわかりにくかったら、中3生がいつどんな勉強をすべきかを基準に3ヶ月引き算していくといい。

 

中学生は12?1月には塾にこもって演習をするのだから、高校生だと9月だ。こもって演習ができるレベルに、8月までにもっていかないといけない。

 

ここまで読めば、春に駆け込みで入塾してくる生徒がいかに時間が無いかがわかるだろうか。そういうタイプに限って、これまでぜんぜん勉強してきていない。即勉強週間を改善させないと、間に合わない。1年計算で勉強するなら、本当は11月には始めないといけないのだ。

 

ギリギリ駆け込み勢には、生徒本人にも講師にも、本気のスピード感が求められる。

 

 

6-1-2 夏休みが終わるまでに、全範囲を一周するプランを

 

私立の公募推薦入試を受ける準備として、講師は夏の間に全範囲を解説し終えるつもりでカリキュラムを考えねばならない。

 

はっきり言ってかなりキツイが、それがサボってきたツケだ。生徒にも納得させないといけない。

 

ここで重要なのが、やはり解説する内容の取捨選択だ。(これについてはこれまでの章で述べてきた)

 

受験で出題されないようなことを授業でやっている場合ではない。過去問から必要な能力を探らなければならない。出されもしない英文和訳をやっている場合ではないのだ。

 

必ずゴールから逆算してカリキュラムを立てよう。やるべきことを前から列挙すると必ずオーバーする。引き算が必要だ。

 

自習で済むようなものは、授業から省く。これだけ意識していればかなりマシになる。

 

生徒の出来が悪いから、勉強してこないから、というのは言い訳でしかない。危機感を持たせられていないというだけだ。やらねば落ちる、と思わせられていない。誰が何と言おうと受験は落ちることを忘れてはならない。

 

もっとも、落ちても構わないというのならば話は別だが。

 

 

6-1-3 私立一般勢が一番危機感が無い

 

ここまで話してきたのは公募推薦入試の話がベースだが、何もこれは公募推薦を受ける生徒に限った話ではない。

 

私立大学の一般入試勢も同様だ。

 

冷静に考えてみればわかるが、一般入試勢は公募推薦勢よりも出来が良くなくてはならない。

 

公募推薦の方が一般入試より簡単なのだから、同じ問題をやらせたときには一般入試勢の方が余裕で問題を解けなくてはならないのだ。

 

それなのに、入試はまだだからを気を抜いている生徒と講師が多い。

 

果たして彼らは公募推薦入試勢よりもいい点数が取れるのだろうか、という思考回路でなくてはならない。公募推薦で落ちた大学に、一般入試でリベンジして受かるというのは稀有な例だ。

 

また、当初は公募推薦入試を受ける気が無かったのに、やっぱり滑り止めで受験するという生徒も多い。

 

春の時点で言っている志望校がそのままとも限らない。

 

やはり、授業は危機感を持って早く進めておくに越したことはない。

 

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6-2 国公立志望のセンター試験の目標点

 

センター試験も撤廃されるので今後どれだけ参考になるかわからないが、思考回路さえわかっていれば多少の制度変更にも耐えうるはずだと信じて書く。

 

以下はあくまで傾斜配点が存在しないと仮定した場合の話だ。

 

大学ごとの傾斜配点に沿って思考回路を応用してほしい。

 

 

6-2-1 神大レベルを目指す80%

 

80%というのは想像以上に難しい数字だ。

 

実際の目標点は以下のようになる。

 

理系の場合
国語140、数学90,90、理科90,80、社会80、英語160。

 

文系の場合
国語150、数学75,75、理科80、社会80,80、英語180。

 

 

相当得意でない限り、国語で150点以上を見込むのは間違いだ。伸びる子であっても、1問ミスで大きく点が落ちる。そこで落とした点数をどう補うのかが論点となる。

 

文系だろうが理系だろうが、国語と英語で合計300点無いと厳しい。300点取れていても既に20点のビハインドがあることを忘れてはいけない。しかもビハインドは他の教科で80点に上乗せして補う必要があるのだ。

 

理系で英語が苦手だからというのはまったく言い訳にならない。二次試験でも必要な科目なのに、センター試験なんかで躓いていては合格は無理だ。

 

また文系の数学も、チャート式レベルで取れる150点までははっきり言って努力点だ。真面目に効率よくやれば目指せる範囲であり、この目標は下げられない。ここに妥協は一切許されない。

 

一体他でどこで補うというのか。冷静に考えてほしい。

 

ひとつの科目を妥協するということは、他の科目で90点を目指すというのと同義だ。

 

生徒と目標点を決めるときは、一つの科目で悪い点数を取ると他でどれだけリカバリーするのか同時に決めることが欠かせない。

 

 

6-2-2 大阪市大、大阪府大を目指す75%

 

理系の場合
国語140、数学85,85、理科80,80、社会65、英語140。

 

文系の場合
国語145、数学70,70、理科70、社会80,80、英語160。

 

偏った点数の理系の場合
国語130、数学80,70、理科95,70、社会60、英語170。

 

75%になると、苦手科目が1つくらいあっても、得意科目で挽回が可能だ。

 

英語と国語で合計300点、それに加えて得意科目を一つ作ればいい。

 

実際には科目の得意不得意に差があるので、先ほど示したような偏った点数になることが多い。

 

ただ、いくら苦手な科目であっても、60点を取るのが最低限必要だ。

 

また、英語と国語が苦手科目の場合は復帰が困難になる。

 

英語と国語で250点しか取れない場合は、他全て85点が必要な計算だ。

 

この二科目はもちろん、他の科目も妥協が許されない。

 

当然文系の数学も70点が基本ベースだ。

 

 

6-2-3 その他の場合

 

他のレベル帯においても、同様の思考回路をもって目標点を設定していく。

 

二次試験で必要な科目では、センター試験レベル程度は解けないと合格は不可能だと思ってもらっていい。

 

その前提で、傾斜配点に沿って目標点を全体的に調整しながら決めていく。

 

苦手な科目だから何点を目指そう、なんて適当な決め方をしては、間違いなく合計点は不足することを肝に銘じてほしい。

 

 

6-3 模試のフィードバック

 

生徒が模試を受けてきたら、その結果に対してしっかりとフィードバックを行う。

 

何の科目は良かっただとか、そんな感想程度の話ではない。感想をフィードバックとは呼ばない。

 

模試の結果とは過去である。

 

未来の入試に向けて、これから何をどうしていくのか具体的に相談するのがフィードバックだ。

 

模試のフィードバックの目的は、生徒に影響を与えることであり、指導の一環だ。

 

模試の点数という客観的な数字を目の前にしているときが、生徒の行動に変化を与える絶好のチャンスである。

 

模試を受けてきた直後と、結果が返却されたときの2度のチャンスがあるので、積極的に活用していきたい。

 

 

6-3-1 5月模試

 

5月模試で見るべきポイントは、得意科目だ。

 

まず、生徒が得意だと自称している科目に、どれほどの得点力があるのか確認する。

 

尖っていない武器など話にならない。

 

武器無しでは大学入試の城を墜とすのは困難だ。かすり傷すら付かない。

 

まずは武器科目を、使えるレベルに磨くのが優先事項だ。

 

 

このとき、得意科目を伸ばす目的で、生徒とは勉強習慣の話をしたい。

 

平日と休日にどの程度の勉強量を確保するのか決めるべきだ。

 

得意科目であれば、生徒もまだ気乗りしやすく、習慣化に繋がる。

 

苦手科目でいきなり勉強を課しても、完遂できる生徒は稀であろう。

 

まずは得意科目の勉強時間を確保させ、後々少しずつ置換していくのが良い。

 

もちろん得意科目が既に武器として機能しているのであれば、最初から苦手科目に着手するのも悪手ではない。

 

 

5月模試のフィードバックと同時に、8月模試の目標点を決めたい。

 

8月模試の目標点は、本番の1割引きが目安だ。

 

目標が高すぎると思われるかもしれないが、8月模試の難易度から考えても妥当なラインであると考えている。

 

逆に8月模試から本番までの間に劇的な伸びを勝手に期待している方が都合が良すぎるのではないだろうか。

 

劇的に伸びるケースもあるが、それを全員に期待していると受かるものも受からない。

 

 

この時期に注意すべきなのは、5月は体育祭や引退前の部活動などの学校行事が多く、勉強時間を確保しにくいことだ。

 

平日や休日の予定が不規則でパターン化しにくい前提で勉強時間を探させなければならない。

 

受験生としての勉強習慣がついていない生徒に、こんな時期に苦手科目をやれといって、やってくれると期待する方が間違っている。

 

かといって、ここで火を付けないと夏までダラダラと時間が過ぎるのは自明だ。

 

模試を着火剤にして、生徒に引火せねばならない。

 

6月くらいに模試が返却されたら、きちんと火が灯っているのか確認する。

 

フィードバックをどの程度飲み込んで実践出来ているのか確認し、改めて8月模試の目標点を再確認しよう。

 

 

6-3-2 8月模試

 

夏の模試で確認したいのは、何科目が目標点に近付いているのかということだ。

 

特に、春からこの時期までに勉強していた科目は伸びているのか確認する。

 

もしここで伸びていないのであれば、十分な勉強時間が取れていないか、勉強方法のどこかに問題があることが多い。

 

生徒と話して原因を究明する。

 

 

公募推薦入試を受ける場合、そろそろ赤本に着手せねばならない時期だ。

 

私立大学は、センター試験を意識して作られたマーク模試の点数はあくまでも参考にしかならない。

 

実際の過去問で、どれほどの得点力があるのか確認しておきたい。

 

公募推薦入試を受けない場合でも、やはり私立大学の赤本には着手しておくことをオススメする。

 

大体の私立一般入試勢は、この時期に油断していて危機感がない。

 

このタイプには、赤本を解かせて絶望させておくのが最も効く。

 

公募推薦の過去問すら解けないようでは、この先かなり厳しいと伝えてしまうのがよい。

 

 

国公立志望の場合は、夏から11月までは二次試験重視の勉強にしておきたい。

 

記述模試やオープン模試の結果と合否には明らかな相関がある。

 

私の大学の同期には、オープン模試の上位得点者が沢山いた。

 

結局二次試験が解けないと、大学には受からないのだ。

 

二次試験はセンター試験とは違って、パターンというよりも思考力や実力が問われる。

 

この力を養成するには時間がかかるので、センター試験後に後回しにしないことだ。

 

 

夏の模試が返却されるころには、学校の授業が再開していることが多い。

 

夏休み中と比べて自由な勉強時間が減ってしまうので、より細かい習慣の見直しが必要だ。

 

 

6-3-3 11月

 

11月模試というのは、実力をかなり正確に反映している。

 

模試でE判定を取っても合格した話という夢のある話題がよく持ち上げられるが、1人の成功体験の背景には99人の失敗談があることを忘れてはならない。

 

うまくいった例だけがゴシップとして広まるだけである。

 

11月模試の結果によっては、志望校を変えねばならない。

 

この模試から本番までに、暗記科目以外の点数はほとんど変わらないものと思ってよい。

 

まだ夢を見ている生徒にも、どうしても口を出さないわけにはいかない。

 

本人もおそらく気付いてはいるが、逃げているだけなのだ。

 

我々講師としては、逃げずに向き合って考えさせ、浪人するかどうかまでを視野に入れて受験校を決めねばならない。

 

それほどこの時期の模試は重要なのである。

 

 

失点してしまった原因は、一つ一つ究明していきたい。

 

理解が不十分なのか、まだ演習不足なだけか、ならばどうすればいいのか、様々なことを考えていきたい。

 

 

また、科目館での情報交換も重要だ。

 

模試の点数がラッキーなのか、実力なのか、不運だったのか、などの情報を確認しておきたい。

 

実際に何点取る力があるのか把握しないと、目標点の修正も難しい。

 


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