大学受験の勉強や高校の授業で困ったときは - 塾講師が教える受験勉強のコツや勉強法

3章 塾講師の予習

 

 

塾講師のアルバイトの教え方、マインド編です。

 

 

3章 予習

 

塾講師の仕事は授業をすることだと考えられがちだが、実のところ慣れれば授業をすることそのものはそれほど大変ではない。
実はその授業の下ごしらえである予習に一番頭を使う。
予習が出来ていない授業の結果など見え透いている。
伝わるものも伝わらない。
この章では予習の思考回路について話す。

 

 

スポンサードリンク

内容の取捨選択とその並び替え

 

授業の項でも述べたが、教科書の内容とは全てを列挙しているが故に分かりにくい。
何が重要なのか、読んでもわからない。

 

 

予習では、教科書という雑木林の草抜きや枝打ちをする必要がある。
雑草や無駄な枝があると、育てたい木も育たない。
やもすれば木を見つけることすらも出来ない。

 

 

1つの授業で伝えたいメッセージを多くとも3つに絞る
それに無関係なものは全部切り取ってみる。
それだけでもかなり分かりやすい。

 

 

漏れを怖れることはない、次の授業に入れれば良いのだ。
一連の授業で最終的に含まれていればいい。
何を選ぶかというよりも、何を削るかという観点の方が分かりやすいかもしれない。
難しい内容は全部後に回して、概要を全てなぞってしまう。
それでも問題は“解ける”。
10言って1伝わるより、3言って3伝わることを目指したい。

 

 

わかりやすさとは、並べ替えの上手さ

 

一つ一つの説明の方法に悩むことがあるかもしれないが、実のところ何を言うかはさほど重要ではない。
最も重要なのは、話す順番である。
話が分かりにくい人は、話す順番が下手なのだ。

 

 

塾の授業の予習とは、何をどの順番に話すのかを考えることに他ならない。
項目の列挙で終わってはいけない。

 

 

同じ単元の解説も、順番次第でわかりやすくも意味不明にもなる。
“解説”など話す内容も限られているはずなのに、その構成で分かりやすさに天と地の差が生まれる
声の強弱やトーンなどでも分かりやすさは変化するが、それらはあくまでも補助的な役割であり、まず内容の順番自体を洗練させることが“解説”の攻略に欠かせない

 

 

世に言う文章力とは、構成力(順番を考える力)なのではないかと思われる。
身振り手振りを加えられる授業とは異なり、文章は文だけで勝負することになるのだから、なるほど順番が命である。
この文章も読者に伝わるようにと、順番に最も苦心しながら書いている。

 

 

下のレベルから埋めるように授業を組み上げる

 

具体的にどのように予習をすればいいのか、ここまでの内容をまとめよう。

 

 

まずは一つの単元の解説に含めるべき内容をザッと列挙してみる。

 

 

次に取捨選択だが、まず最低限必要なものから考えてみる
下のレベルの生徒でも絶対に必要な内容は、上位でも当然必須である。
薄くすることはあっても抜くことはない。
それらをピックアップして並べ直してみるだけでも、単元の概要となる。
これが授業の軸であり、土台である。

 

 

この土台に対しては妥協がゆるされない。
生徒が疑問に思いそうなことには全て答えを用意するつもりで準備する。
この土台は、最低限“解ける”ために必要なものになる。
“わかる”の段階ではない。(「解ける」と「わかる」については2章で述べた)

 

 

例えば中学英語で、want toについて教えたいとする。

 

「toの後ろは原形」であったり、「『?したい』という訳」が土台であり、“解ける”ために必要だ。
このとき「want toの不定詞は名詞的用法」という情報は、“解ける”ためには必須ではない。
これは“わかる”の段階だ。
こんなことから先に話してしまうと、生徒は「何だか難しそうだ」と敬遠したくなる。
そのうち理解してほしいと思うところだが、順番に工夫が必要だ。
後々自分で気付かせるでも良い。
とりあえず置いておく方が生徒にとっては分かりやすい。
思考(わかる)を伴わない行動(解ける)はいけないとは言ったが、それを生徒に要求するのは苦しい。
とにかくやっているうちにわかることの方が多いものだ。

 

 

予習では、このように土台から順にピラミッドを作り上げていく
生徒がどの段まで付いてこれるかによって、“天井”を変更する。
ひとまずは“解ける”を目指す
興味がある子は放っておいても勝手に“屋根裏”まで登っていく。
そのときは改めて天井を上げて“わかる”を目指す授業に切り替える。
もちろんそこまで予習は済ませておく。
正しいピラミッドに並べ換えることを目標に予習すれば、きっと授業もやりやすい。

 

 

必須内容は模試でわかる

 

先の項でピラミッドの土台から順に解説せよとは言ったが、土台で終わってよいという意味ではない
解説の究極的目標は、志望校合格である。
定期試験は通過点に過ぎない。
保護者からの評価を貰えても、講師は定期試験を解けて満足している場合ではない。
授業では、せめて下位の模試の基本問題で点が取れるレベルまでは進めておきたい。
難問を解けろとまで言わない。

 

 

高校生の場合は、進研模試くらいのレベルが必須レベルとなる。
学校によっては定期試験レベルが進研模試すらを下回っているが、そんな定期試験でいくら点を取っていようとも全くもって不十分である。
指定校推薦狙いの場合でも、模試の結果を加味するような場合があるので注意が必要だ。
ましてや枠が確定していないのであれば、推薦を貰えなかったときのことまで考えて、やはり進研模試程度は必須である。

 

 

ということは、予習の段階で、模試のレベルを確認しておくことが望ましい。
“天井”を決めるのに役立つ。
このあたりでいいだろうと勝手に判断せず模試という客観的な天井を活用したい
中学生でも高校生でも同じだ。
模試や過去問を知ることは、よりよい授業に、そして結果につながる。

 

 

単元をまたいで予習する

 

2年も講師をして、様々な単元の解説を経験すると、授業や予習に余裕が生まれる。
そこで満足するのも良いが、もう一歩先を見てみる
これは経験を積んだものの特権である。

 

 

講師として様々な単元を“わかる”ようになれば、単元と単元の間の繋がりが見えてくる
共通の発想や着眼点があることに気付けば、更に一段上の“わかる”に登る。
これを授業に活かす。

 

生徒の“わかる”を助けるために、余談を挟む。
「実はこれとこれって、全然違うようで同じなんだよ」というような話をする。
こういった内容には主観を混ぜやすい。
主観が混ざると、授業が面白くなる。
(主観については2章を参照)

 

 

これは別にハイレベルな解説というわけでもない。
単元横断型の問題は模試にも出題されるのである。
天井として丁度いい

 

 

高校数学であれば、三角比と、図形の性質は簡単にドッキングできる。
というよりドッキングせねば模試が解けない。

 

 

最も分かりやすいのは数Uの単元だ。
ほぼ全て二次関数が必要である。
三角関数も、指数関数も、対数関数も、結局は二次関数として解くのだ。
これに気付いたら、それら単元は“わかった”も同然だ。
「結局二次関数になるんだよ」という主観的な一言で、生徒の理解度に大きく貢献できる。
教科書に無いような切り口の主観の情報には価値がある。

 

 

勿論こんな予習は、一つ一つの単元を予習したことがないと難しい。
これは予習の上にある予習(メタ予習)なのだ。
1年目から目指さなくてもよいが、頭の片隅に置いておくといつか役に立つ。
(「メタ?」という言葉の解説についてはここではやめておく)

 


このサイトでは大学受験の悩みや、勉強法についての悩みの解決をお手伝い致します。


よろしければ他のページも是非ご覧ください。


直接面談やメール、Skypeによる個別相談・指導も承っています。


詳しくはプロフィールへ。



スポンサードリンク


HOME プロフィール お問い合わせ