大学受験の勉強や高校の授業で困ったときは - 塾講師が教える受験勉強のコツや勉強法

5章 塾講師の指導の行動

 

5章 指導の行動

 

具体的な“指導”内容は本当に多岐にわたる。
指導を行うには講師の知識も問われるが、極力それを補えるよう内容を考えた。実際に生徒に対して話してきた内容ばかりである。
担当してきた生徒のほとんどが高校生なので内容が偏っているが、思考回路を真似できそうなら中学生でも積極的に採用してほしい。

 

 

5-1 授業中に何を話すか

 

5-1-1 具体的に指示する

 

まずはじめに指導において意識してほしいことは、何事も具体的に話をすることだ。
特に宿題や問題演習などの勉強を課すとき、「○○やっておきや」というだけでは指導になっていない。それはただの指示である。
具体的にやる内容は勿論、何故やる必要があるのか、それをやればどうなるのか(何が鍛えられるのか)、それが終わったら次は何に取り掛かるのか、話すべき内容は無限にある。
内容や理由など、講師の思惑を生徒と共有することを意識したい。そこまで出来れば、指示が指導に昇華する。

 

勉強の指示を指導に昇華させる上で、5W1Hの発想を用いると分かりやすい。
何の教材の、どこまでを、いつまでに、何のために、どのように…言い始めたらキリがないが、とにかく脳みそを共有する。
共有すれば、やらなければならないということが伝わる。
それが指導となる。

 

必要性だけではなかなか人は動かないから、次はモチベーションに働きかける。
やればどうなるのか、具体的に想像させればいい。
ダイエット食品の広告には大抵ダイエット成功者の写真があるが、あれと同じ効果を狙う。
「この問題集が終わる頃には、○○大学の問題は解ける」という具合だ。

 

「シス単を1200まで覚えたら、センター英語でわからない単語はほぼなくなる」
「チャート式を完璧にすれば、センター数学で7割はカタい」
正しい知識があるのが理想だが、やる気を出させるためには嘘も方便だ。

 

具体的に話を出来ないような勉強なら、講師側の考察が足りない。何となくでやらせようとしている証拠だ。
本当に必要な勉強を選ばないと、生徒のやる気も時間も足りなくなる。
意味も無くやらされる勉強ほどやる気を削いで勉強嫌いにするものはない。
どうせやらせるなら、結果につながる勉強に着手させたい。

 

 

5-1-2 塾外の時間の使い方を考える

 

塾外で過ごしている時間に働きかけるためには、生徒と一緒に具体的に日常を振り返る必要がある。まずは生徒の1週間の生活リズムを把握しよう。

 

何か勉強習慣を増やすためには、1日の他の習慣を減らさなければならない。減らす候補に何があるのかを一緒に考える。満タンの押入れにモノは入らないのは当然だが、ただ片付けろというのではなく何をどう片付けるのか一緒に考えてこそ指導だ。

 

ロクに指示もせず、「やっておきや」の一言で済ますことなど小学生にでもできる。世の中にはそんな小学生講師が蔓延っているが、我々はプロ意識を持ちたいところだ。

 

 

5-1-3 他の教科とのバランスを調整する

 

これは主に高校生の話だが、自分の好きな科目ばかり勉強しているような受験生は多い。

 

ただ、大学入試の多くは科目ごとの配点がバラバラだ。全体の5%しか占めていないような科目に、30%の時間を割くのはナンセンスだ。報われない勉強をさせてはいけない。

 

逆に、自分の担当科目の勉強ばかり目が行くのも間違いだ。最終目標は担当科目の勉強ではないはずである。全体の50%の配点がその科目にあったとしても、残りを放置して入試に合格することは絶対にないと断言する。1日に5時間勉強時間を確保してきたなら褒められるが、それが全て数学の勉強なら口出ししてあげなくてはならない。

 

 

5-2 志望校と目標点を決めよ

 

解説や指導の方向性を決める重要なファクターだ。ゴールを初めに設定していないマラソンなど怖くて見てられない。突如ゴールが逆方向に設定されたらどうするというのだろう。

 

具体的な指導でないと結果には繋がらない。具体的に指導をするには、明確な基準が必要である。その基準こそが志望校であり、目標点だ。

 

 

5-2-1 志望校

 

もし生徒に志望校があるとしたら、配点や合格ラインをすぐに調べることだ。何となくこの辺りだろう、というのは熟年の経験者だけができることだ。2分もあれば出来ることなので必ず面倒がらずに調べる。改めて“天井”を決めるのに必要だからだ。(“天井”については3章の予習で述べた)

 

そして、どの科目で何点を取るのか、全て具体的に決める。目標点数は随時修正していくので、とりあえずでよい。決まっていないのが一番問題だ。生徒に認識させていなくとも、講師は必ず把握しておく。
模試があったら、そのときの点数を目標を常に見比べて、その後の作戦を練る。多くの場合は目標に修正が必要だ。

 

 

5-2-2 目標校

 

志望校がない場合、目標校を講師から提案して設定しよう。先も言ったが、目標が無いことが問題なのだ。志望しているかどうかは置いておいて、基準となるものが欲しい。勉強方針の決定に必須だ。

 

もし高校生なら、関関同立と産近甲龍の線引きはキッチリと行うべきだ。対策に必要なレベルが全然違う。生半可な気持ちでこの線は越えられない。現実的な範囲での高めを目指そう。

 

もちろん生徒に志望校が出来た時は、いち早くそちらへの方針にシフトする。近大を目標にしていたが関大を志望校にするとなれば、その逆であっても、計画は大きく変わるはずだ。

 

 

5-2-3 目標点

 

目標点の決めるのに重要なのは、どこで何点落とすか、という観点だ。

 

合格ラインが決まっているということは、合計何点落としてもいいかが決まっているということである。一科目諦めたら、その分どこで挽回するのかを同時に考える必要がある。

 

この生徒は何点しか取れなそうだ、という上限的な目標の決め方をすると、他の科目に影響が出る。他の科目を補える自信がないなら、勝手な上限を定めてはいけない。その上限を上げる努力をせねばならない。

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5-3 他教科の指導

 

5-3-1 解説ではなく指導なら出来る

 

ここまで順に読んでくれている人ならタイトルから察してくれるかもしれないが、他教科の指導と題を付けたのには理由がある。解説と指導は全く別物だからだ。

 

他教科の場合は指導というよりも管理といった方が近い。点数推移の確認、勉強時間の割合、進捗、成果、これらの管理など誰でも出来ることだ。

 

志望校の入試の配点を確認し、集中して対策すべきか、そうではないかを決定する。自分の担当科目でもやっているはずのことだ。もっと俯瞰的に行えというだけの話である。

 

 

5-3-2 他教科が悪いと担当科目も不利になる

 

目標点の項でも述べたが、入試では落としてもいい合計点が決まっている。他教科の面倒を見ないということは、それを補えるだけの点数を自分の担当科目で取らせる責任があるということである。無論そんなのは無茶な話だから、他の科目も管理する。

 

 

5-3-3 他教科の講師と情報交換せよ

 

どんな勉強が必要なのか、どの教材をどのようにやればいいのか、そんな情報は勿論その科目の講師が知っている。それを聞いて取り入れようとせねばならない。

 

私は英語、数学、化学、生物の講師だが、必要に応じて国語や世界史などの勉強も指導する。どこで何点取ればいいのかも自分で決める。国語科講師などから学び取ったことをそのまま伝達しているに過ぎないが、それでも効果は著明である。

 

他の講師から、直接生徒に話をしてもらうでもいい。その場合は何を話しているのかを盗み取り、次から活かすようにする。他の講師と積極的に盗み合っても知識は減らないので、一人一人の価値が膨れ上がっていく。

 

講師の限界は生徒の限界に直結する。ただ講師の限界は、講師同士の足し算で決まることを覚えておきたい。

 

 

 

5-4 模試を使いこなす

 

模試で点を取るということは、保護者へのアピールを抜きにしても、非常に大切である。模試というのは偶然良い点が出たりすることもあって評価が難しいが、それでも覚えておきたいことがある。

 

 

5-4-1 模試の結果が偶然悪い、ということはない。

 

体調不良、緊張、予想外の事態、それら全てを足して実力である。本番に体調が万全な保証などどこにもない。
模試で悪い結果が出るなら、本番も悪い結果が出る。キツイようだがそれが現実である。どこまでオブラートに包んで生徒に伝えるかは、生徒と講師のキャラにもよる。

 

 

5-4-2 模試が悪いとき、ヤバいと感じさせる

 

模試の成績が悪いと生徒は言い訳をしたがるものだが、先ほど述べた通りそれでも結果は結果である。本番も言い訳をする気か、と言わなければならない。

 

ましてや講師が自分自身に対して言い訳をしているようでは話にならない。模試が悪いということは、自分の解説か指導に何か足りていないことがあるということだ。

 

 

5-4-3 最終目標点と次回目標点

 

模試を何度も受ける意義はここにある。最終的にこのレベルで何点必要なのか、その中継点である次回は何点取らなければならないのか、必ず決める。

 

次回目標点を決める上で重要なのは、生徒に爆発的な伸びを期待しないことだ。
爆発的な伸びをする生徒がいるのは確かだが、それを考慮した上で目標を決めるのは違う。曲線的に伸びる保証などない。あくまでも、直線的にしか伸びないと仮定しないと、後々キツくなる。

 

 

5-5 学校の授業を活用する

 

5-5-1 学校の時間は塾の数倍

 

塾で過ごす時間は1/112だと言ったが、学校の授業で考えるとどうだろうか。

 

仮にある授業が45分×4コマあったとしたら、その時点で塾の2倍の時間を占めている。たった一つの授業でこれだから、全ての科目を考えるとすごい量になる。初めから全てのコマに働きかけて有効活用させるのは現実的ではないから、まずは自分の担当科目から考えてみる。

 

5-5-2 学校より先行する

 

まず大前提として、生徒は学校の授業を聞かないものと考えよう。それは何故か、つまらないからだ。聞いていても何を言っているかわからないのが根本の原因である。

 

塾の講師として出来ることは、学校の授業が何を言っているかわかるようにすることだ。

 

最も簡単な方法が、学校の予習的に先に進めておくこと。

 

これはこれで学校の時間が無駄に感じられるかもしれないが、案外そうでもない。学校の授業がいい復習となって、定着に貢献できる。塾での取りこぼしも拾ってくれる。テスト前には宿題という形で演習も課してくれる。これを上手く使うのだ。

 

5-5-3 内容を取捨選択する

 

学校の方が進んでいて塾では2回目の解説になっているはずのときでも、生徒は学校で何も聞いていないかのような反応をしてくる。学校の授業があたかも無かったかのようになっている。これは非常に勿体ない。悲しいことに、塾で解説したことすら忘れられている。

 

解説の取捨選択が必要だ。何でもかんでも解説していては進まないし、覚えてもらえない。ここで予習が役に立つ。最低限の解説にとどめれば、わかりやすい授業をどんどん進めることができる。

 

取りこぼしは学校でやってくれるし、テスト前にどうせ復習として解説するのだ。1回目でスキップすることに問題はない。むしろ生徒のスッキリとした理解に貢献できる。最初から何でも教えてはパンクしてしまう。

 

 

5-6 定期試験と模試を見比べる

 

5-6-1 定期ではいいのに模試が悪い、のはマズい

 

学校の中では優等生なのに、模試になると点をぜんぜん取れない子がいる。これは講師が思っているよりもあまりよくない状態だ。

 

先にも述べたが、模試の結果とはすなわち実際の実力だ。この結果を軽視してはいけない。

 

それなのに、定期試験の点数がいいと、生徒も講師も危機感を持ちにくい。定期試験は良い結果だから、この模試の結果はたまたま悪かったのかと錯覚する。

 

定期試験で点が取れるのに模試で結果につながらないのは、試験直前に答えを覚えているだけなのだ。まったく定着していないと言っていい。答えさえ覚えれば定期試験など乗り越えられる。身に覚えがあるだろう。

 

 

5-6-2 定期試験のレベルは学校によって違う

 

特に高校では顕著だが、定期試験の難易度は学校によって様々だ。何点取れれば十分なのか評価が難しい。

 

入試問題レベルの問題で60点なのと、公式レベルの問題で90点なのでは、前者の方がきっと上位にいる。定期試験ではこれが見えにくい。

 

平均点と比べる手もあるが、そもそも平均点自体がその学校内の基準でしかない。結局全体としての位置はわからないのだ。

 

このことを忘れて、定期試験の点数が良いから大丈夫、などと講師が思っていては危険だ。模試で結果が出ないのに放置するような事態を招く。

 

 

5-6-3 生徒は満足しても講師は満足するな

 

定期試験は結局、どれだけ真面目に勉強したか、試験勉強にどれだけ時間を割いたかの指標でしかない。

 

実力があるかどうかとは、また別の問題である。

 

生徒は良い点数を取ったときは喜んで満足していると思うが、講師はそれで満足してはいけない。実力に繋がっているのか見極めなくてはならない。

 

講師が見極めを怠ると、受験では落ちる。

 

講師が受験は落ちるものだということを前提に考えていないと、涙するのは生徒だ。悲しい想いをさせないためにも、講師は常に緊張感を持ちたい。

 


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